GSOMIA破棄 、エライコッチャ?
GSOMIA破棄 問題に対する米国の態度
日韓 GSOMIA(以下「GSOMIA」)破棄 をめぐる報道が佳境に入っていますが、この件に安全保障貿易管理[1]を絡めることに関しての日本の塩対応はそれとして、米国が本件に関して猛烈な勢いで公式の声明等を出しているかと言うと、それほどでもないような印象ではないでしょうか。
米国の基本的態度は、① GSOMIA 破棄 は日韓の二国間問題である、②コトは日米韓の体制(Trilat)に係る重大問題 — 協定破棄は反対勢力を利する — ので米国としては事態打開に向けて様々な場を提供する、の2点のみのようです。
その上で、「協定は絶対に破棄するなよ!」と米国は繰り返して警告を発しているものの、何としても破棄を撤回させるぞという熱気はなくて、「言うべきことは何回も言ったからな?」という態度に思えます。
とは言っても、実際のところキレているようですが[2]。
立法考査局主催セミナー 「外交政策と日本」
GSOMIA 問題って、日本にとってどれぐらいエライコッチャ、なのか?
ときに、今年(2019年)のはじめ、02月07日(木)に国立国会図書館・調査及び立法考査局主催で開かれた「平成30年度国際政策セミナー アメリカの外交政策と日本」の報告書が先月(10月08日)公表されました[3]。
佐藤 毅彦 氏[4]による趣旨説明スライドでは、トランプ政権の動向をTable 1のようにまとめています。
ざっと見ても、米国は非常に忙しい。北朝鮮問題は最大重要テーマのひとつではあるものの、そのなかで 米国の関心事 ということで言えば、 GSOMIA の問題がどれくらいのウエイトを占めるか、考えた方が良いかもしれない。
2017年
- 01月20日
- トランプ氏、第45代アメリカ大統領に就任
- 北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を表明
- 01月23日
- 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱する大統領覚書に署名
- 01月27日
- イスラム圏7か国の国民の入国を制限する行政 命令に署名
- 06月01日
- パリ協定からの離脱を表明
- 11月20日
- 北朝鮮をテロ支援国家に再指定
- 12月06日
- エルサレムをイスラエルの首都と承認
2018年
- 05月08日
- イラン核合意からの離脱を表明
- 06月12日
- 史上初の米朝首脳会談
- 06月19日
- 国連人権理事会から脱退
- 07月06日
- 中国の知的財産侵害に対する制裁関税を発動
- 09月30日
- アメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に合意(11月30日調印)
- 10月20日
- 中距離核戦力(INF)全廃条約離脱方針を発表
- 12月19日
- ISIL(「イスラム国」)に勝利したと宣言
Source: 国立国会図書館 (2019). p. 8 [3]
「自由で開かれたインド太平洋」
上記趣旨説明に続く、マイケル・マスタンドゥーノ氏[5]による基調講演、「戦略は変容したのか? —トランプ政権と『インド太平洋』におけるアメリカの外交政策—」の中で、「地域への影響と日本の特別な役割」について言及しています(Table 2)。
※ここで「地域」とはインド太平洋の枠組みの中でのアジアを指し、「選択」とは「中華人民共和国かアメリカ合衆国か?」という選択を指します。
なお、ご存知のように インド太平洋戦略 における韓国の役割については既に強調されているところです[6]。これと GSOMIA破棄 との折り合いはどのように取られるのか。
こうして見ると、GSOMIA 自体は確かに重要な問題とはいえ、全体の枠組みからすると目的に対応する手段、ひとつのパーツです。
したがって、その破棄によって生じうる技術的な障害はもちろん大問題ではあるものの、それ以上に「この状況で敢えて GSOMIA破棄 を貫く」という選択の象徴的な意味が極めて大きいと考えられないでしょうか?
これはちょっとGathering Storm[7]な状況では無いかとすら思ってしまいます。
- 他の国は「選択しない自由」を望んでいる
- 特別な重要性 – 外交 – 日本:
- 安全保障において、アメリカとより密接である;
- 経済において、米中の狭間で「ヘッジ」する
(双方に対応する); - 統治とルール作りにおいて、中国と競争する;
- アメリカをゲームに連れ戻す
Source: 国立国会図書館 (2019). p. 26 [3]
アジア再保証イニシアチブ法(ARIA)
この文脈で興味深いのが、アジア再保証イニシアチブ法(ARIA)[8]ですが、これについては、また改めて紹介したいと思います。
References
[1] 安全保障貿易管理, 経済産業省
[2] U.S. House of Representatives (2019). ‘Engel Statement on ROK’s Failure to Renew the Korea-Japan Military Information Sharing Agreement’, Press Releases, 2019.08.24 ( EN | Google翻訳 )
[3] 国立国会図書館 (2019) アメリカの外交政策と日本 平成30年度国際政策セミナー報告書. 国立国会図書館 調査及び立法考査局, 2019年10月 [PDF 2.5 MB]
[4] 国立国会図書館専門調査員・調査及び立法考査局外交防衛調査室主任
[5] Dr. Michael Mastanduno, ダートマス大学教授(Nelson A. Rockefeller Professor of Government, Dartmouth College)
[6] U.S. Department of Defense (2019). South Korea’s Role Key in Advancing Indo-Pacific Vision ( EN | Google翻訳 )
[7] Charmley, J. (2011). ‘Churchill: The Gathering Storm’, BBC ( EN | Google翻訳 )
[8] The Asia Reassurance Initiative Act (ARIA) of 2018 ( EN | Google翻訳 )