2019年11月23日に協定失効?
「秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定」(以下「GSOMIA」)は、韓国の協定破棄通告(2019年08月23日)に伴い、ご存知のとおり、このまま行くと今月23日(2019年11月23日)に失効します。
GSOMIAの締結は2016年11月23日[1]ですから、これが失効すると日韓での秘密軍事情報の保護に関する取り扱いは同日よりも前の状態に戻ることになります。
GSOMIAが失効すると何が困るのか?
GSOMIAが失効すると何が困るのか?米国戦略国際問題研究所(CSIS)のVictor Chaシニアアドバイザーが、「GSOMIA失効が意味するもの」と題して、8月22日のニューズレター[2]でKey Points 6点を挙げています。
- GSOMIAを更新するつもりが無い旨を韓国政府が本日アナンウスしたことは、日韓が互いに相手国を貿易のホワイトリストから外して以降の両国の争いがエスカレートしていることを反映している。
- GSOMIAは、地域における北朝鮮の動きに関する情報の日韓と米国との間でよりシームレスに共有(seamless intelligence sharing among the two allies)することを可能とするものである。
- ひとたびGSOMIAが破棄されれば、とりわけ過去の韓国国内の政治的障壁を考えれば、その再締結は困難である。
- 日本に対する韓国の執念深い(vindictively)行動は、日米韓3国間協力(trilateral cooperation among the three countries)を弱体化させることにより、米韓の同盟を弱体化させるものである。
- どのような政治的アクションであれ、GSOMIAが失効した後の空白を埋めることはできない。このような問題の発生は、北朝鮮、中国及びロシアによる米国対抗体勢の利益になるだけである。
日米韓のシームレスな情報共有を阻害
ここでのキーワードは、①シームレスな情報共有と②日米韓3国間協力です。②はもちろん日米韓3か国の安全保障協力(trilateral defense cooperation)を言い換えたもので、①に関連して日米韓情報共有協定(Trilateral Information Sharing Agreement: TISA)も問題になってきます。
シームレスな情報共有とは
日米間及び米韓間はそれぞれ同盟関係にありますから、秘密軍事情報の共有にあたっては比較的問題は少ないと言えそうです。
しかし、ご存知のように日韓間に同盟関係はないので、たとえばどこかの国がミサイルを発射したなどという場合、日韓間で秒単位での情報交換が必要なのに、 GSOMIA がなければいちいち米国を介さなければならないわけです。非常にメンド臭い。
実際、シュライバー米国防次官補も2019年08月28日にCSISで行った講演で、「非常に複雑な安全保障環境にあって情報共有は時間の勝負であり、ミサイル発射の兆候を把握した場合に(日韓 GSOMIA 無しに米国を介した)面倒な情報共有手続きなどやっていられない」と述べています[3]。
GSOMIA が無いとどれくらい面倒くさいか?
そもそも GSOMIA で日韓は何を合意しているのか?実はちゃんと読んだことがなかったのでこの機会にオリジナルにあたってみました(次のセクション)。
GSOMIA は、民間でも日常取り交わされるNDA(秘密保持契約)の軍事機密バージョンですが、さすがにこれが無いと怖くて相手方と機密を共有することは無理でしょう。
しかし、 GSOMIA が存在しない場合、韓国は日本が米国に渡した情報を米国からもらい、逆に日本は韓国が米国に渡した情報を米国からもらうしかありません。
もちろん、米国は片方の国から得た情報をもう片方に勝手に渡すわけには行きませんから、米国は、日米、米韓それぞれの GSOMIA 手続きを踏まなければならないことになります。そんなことやってられるか💢、と米国が怒るのも無理はない感じです。
伊藤俊幸氏による正確な解説
GSOMIAが具体的にどのように運用されているのか、元海将の伊藤俊幸氏(金沢工業大学虎ノ門大学院教授)が「NHK政治マガジン」の1からわかるGSOMIAで詳しく解説していらっしゃいました[4]。
ざっと探してみたところ、現時点でこれ以上に正確な解説はネット上に無いようです。ぜひご覧ください。
# 素人がイタい御託を並べる前に発見できて助かった😅 (11月12日追記)
公式合意文書
GSOMIAの公式合意文書は外務省のサイトからダウンロード可能[5]ですが、フォーマットがPDFでしかも縦書きなので扱いにくいため、以下にタテのものをヨコにするという気の遠くなるような作業をしたHTMLを載せておきます。
*1 文書の末尾に「英語により本書二通を作成した。」とあるので正文は英語版です。
*2 ヘッダやリストの体裁は当サイトで普段使っているスタイルをそのまま使っているので、オリジナルとは異なります。
秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定
日本国政府及び大韓民国政府(以下「両締約国政府」といい、個別に「締約国政府」という。)は、両締約国政府の間で交換される秘密軍事情報の相互保護を確保することを希望して、次のとおり協定した。
第一条 目的
両締約国政府は、この協定の規定が各締約国政府の施行されている国内法令に合致する限り、当該規定に従って、秘密軍事情報の保護を確保する。
第二条 定義
この協定の適用上、
- (a) 「秘密軍事情報」とは、日本国政府若しくは大韓民国政府の権限のある当局により作成され、それらの使用のために作成され、又はそれらにより保持されている防衛関連情報であって、各締約国政府の国家安全保障のために保護を必要とするものをいう。その情報には、秘密指定及び、必要な場合には、その情報が秘密軍事情報であることを識別するための適当な表示を付す。その情報は、口頭、映像、電子、磁気若しくは文書の形態又は装備若しくは技術の形態をとることができる。
- (b) 「提供締約国政府」とは、秘密軍事情報を提供する締約国政府をいう。
- (c) 「受領締約国政府」とは、提供締約国政府から提供される秘密軍事情報を受領する締約国政府をいう。
- (d) 権限のある当局」とは、防衛関連情報の保護について責任を有する当局として、締約国政府によって指定される当該締約国政府の機関をいう。一方の締約国政府は、他方の締約国政府に対し、外交上の経路を通じて、その権限のある当局を通報する。
- (d) 「秘密軍事情報取扱資格」とは、各締約国政府の適当な手続に従って個人に付与される適格性であって、秘密軍事情報を確実に取り扱うためのものをいう。
第三条 国内法令
一方の締約国政府は、要請があったときは、他方の締約国政府に対し、秘密軍事情報の保護に関する自国の施行されている国内法令について通報する。一方の締約国政府は、この協定の下での秘密軍事情報の保護に影響を及ぼす当該国内法令のいかなる変更についても、他方の締約国政府に対して通報する。
第四条 秘密軍事情報の秘密指定及び表示
- 1 秘密軍事情報には、次のいずれかの秘密指定を表示する。
- (a) 日本国政府については、「極秘」、「特定秘密」又は「秘」
- (b) 大韓民国政府については、「군사Ⅱ급비밀」又は「군사Ⅲ급비밀」
- 2 受領締約国政府は、提供された全ての秘密軍事情報に提供締約国政府名及び受領締約国政府の対応する秘密指定を表示する。対応する秘密指定は、次のとおりとする。
日本国 | 大韓民国 | 注 英語において相当する語 |
極秘/特定秘密 | 군사Ⅱ급비밀 | SECRET |
秘 | 군사Ⅲ급비밀 | CONFIDENTIAL |
- 3 受領締約国政府が作成する文書又は媒体であって、提供締約国政府から提供された秘密軍事情報を含むものには、適当な秘密指定を表示し、また、当該文書又は媒体が提供締約国政府から提供された秘密軍事情報を含むことを識別するための表示を付す。
第五条 補足実施取決め
この協定に基づく補足実施取決めは、両締約国政府の権限のある当局により作成することができる。
第六条 秘密軍事情報を保護するための原則
両締約国政府は、提供された秘密軍事情報を保護するため、次の事項を確保する。
- (a) 受領締約国政府は、提供締約国政府の事前の書面による承認を得ることなく、第三国の政府、個人、企業、機関、組織又は他の団体に対し、当該秘密軍事情報を提供しないこと。
- (b) 受領締約国政府は、自国の施行されている国内法令に従い、当該秘密軍事情報について提供締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。
- (c) 受領締約国政府は、提供締約国政府の事前の書面による承認を得ることなく、当該秘密軍事情報が提供された目的以外の目的のために、当該秘密軍事情報を使用しないこと。
- (d) 受領締約国政府は、自国の施行されている国内法令に従い、当該秘密軍事情報に関係する特許権、著作権又は企業秘密のような知的財産権を遵守すること。
- (e) 当該秘密軍事情報を取り扱う政府の各施設が、秘密軍事情報取扱資格を有し、かつ、当該秘密軍事情報にアクセスすることを許可されている個人の登録簿を保持すること。
- (f) 各締約国政府は、当該秘密軍事情報の配布及び当該秘密軍事情報へのアクセスを管理するために、当該秘密軍事情報の識別、所在、目録及び管理の手続を設定すること。
- (g) 提供締約国政府は、当該秘密軍事情報であって、受領締約国政府に対して以前に提供したものの秘密指定のいかなる変更についても、受領締約国政府に対して書面により速やかに通報すること。受領締約国政府は、提供締約国政府からのその通報に従い、当該秘密軍事情報の秘密指定を変更すること。
- (h) 受領締約国政府は、当該秘密軍事情報が提供された目的のために必要とされなくなった場合において、適当なときは、次のいずれかの措置をとること。
- (i) 当該秘密軍事情報を提供締約国政府に返還すること。
- (ii) 第十三条の規定及び自国の施行されている国内法令に従って当該秘密軍事情報を破壊すること。
第七条 秘密軍事情報への職員のアクセス
- 1 いかなる政府職員も、階級、地位又は秘密軍事情報取扱資格のみにより、提供された秘密軍事情報へのアクセスを認められてはならない。
- 2 提供された秘密軍事情報へのアクセスは、政府職員であって、職務上当該アクセスを必要とし、かつ、受領締約国政府の施行されている国内法令に従って秘密軍事情報取扱資格を付与されたものに対してのみ認められる。
- 3 両締約国政府は、政府職員に秘密軍事情報取扱資格を付与する決定が、国家安全保障上の利益と合致し、及び当該政府職員が提供された秘密軍事情報を取り扱うに当たり信用できかつ信頼し得るか否かを示す全ての入手可能な情報に基づき行われることを確保する。
- 4 提供された秘密軍事情報へのアクセスを認められる政府職員に関して、3に規定する基準が満たされていることを確保するために、適当な手続が、両締約国政府により自国の施行されている国内法令に従って実施される。
- 5 一方の締約国政府の代表者が他方の締約国政府の代表者に対し秘密軍事情報を提供する前に、受領締約国政府は、提供締約国政府に対し次の事項についての保証を与える。
- (a) 受領締約国政府の代表者が、必要な水準の秘密軍事情報取扱資格を有すること。
- (b) 受領締約国政府の代表者が、公用の目的でアクセスを必要とすること。
- (c) 受領締約国政府は、自国の施行されている国内法令に従い、当該秘密軍事情報について提供締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。
第八条 訪問
一方の締約国政府の代表者が、他方の締約国政府の施設であって、秘密軍事情報へのアクセスを必要とするものを訪問するための許可は、公用の目的のために必要なものに限定される。一方の締約国政府の国の領域内に所在する施設を訪問するための許可は、当該一方の締約国政府のみにより与えられる。訪問を受ける締約国政府は、訪問先の施設に対し、訪問案、主題、範囲及び訪問者に対して提供することができる最も高い水準の秘密軍事情報について助言する責任を有する。両締約国政府の代表者による訪問のための申請は、訪問を行う締約国政府の関係する権限のある当局により、訪問を受ける締約国政府の関係する権限のある当局に対して提出される。
第九条 秘密軍事情報の送付
秘密指定された文書及び媒体秘密軍事情報を含む文書及び媒体は、二重の封印された封筒であって、内側の封筒に当該文書又は秘密軍事情報は、政府間の経路を通じて両締約国政府間で送付される。受領締約国政府は、送付に際し、当該秘密軍事情報の保管、管理及び秘密保持について責任を負う。
第十条 施設の保安
一方の締約国政府は、提供された秘密軍事情報が保管されている全ての政府の施設の保安に責任を有するとともに、各施設について、当該秘密軍事情報の管理及び保護の責任及び権限を有する適格な政府職員を指名することを確保する。
第十一条 保管
両締約国政府は、第七条及び第十六条 の規定に従ってアクセスを許可された個人のみがアクセスすることが確保されるような方法により、提供された秘密軍事情報を保管する。
第十二条 秘密軍事情報が送付される間の秘密保持の義務
送付される間の秘密軍事情報の秘密保持に関する最低限の義務は、次のとおりとする。
- (a) 秘密指定された文書及び媒体
- (i) 秘密軍事情報を含む文書及び媒体は、二重の封印された封筒であって、内側の封筒に当該文書又は媒体の秘密指定及び受領することが予定される権限のある当局の住所のみを記載し、外側の封筒に当該権限のある当局の住所、提供する権限のある当局の住所及び適当な場合には登録番号を記載したものにより送付される。
- (ii) 同封される文書又は媒体の秘密指定は、外側の封筒には表示してはならない。封印された封筒は、提供締約国政府の定められた規則及び手続に従って送付される。
- (iii) 受領証が、両締約国政府間で送付される秘密指定された文書又は媒体を含む包みのために用意され、また、同封される文書又は媒体の受領証は、最終的に受領する権限のある当局により署名され、提供する権限のある当局に返送される。
- (b) 秘密指定された装備
- (i) 秘密指定された装備は、その細部が識別されることを防止するために、封印され、被覆された車両により送付され、又は確実に包装され、若しくは保護されるとともに、許可されていない個人によるアクセスを防止するために、継続的な管理の下に置かれる。
- (ii) 発送を待つ間、一時的に保管されなければならない秘密指定された装備は、当該装備の秘密指定の水準に応じた保護を与える保管区域に置かれる。許可された職員のみが、当該保管区域へのアクセスを有するものとする。
- (iii) 受領証は、秘密指定された装備が送付されている間にその管理者が変わる場合には、その都度取得される。
- (iv) 受領証は、最終的に受領する権限のある当局により署名され、提供する権限のある当局に返送される。
- (c) 電子的送付
- 電子的手段により送付される秘密軍事情報は、送付される間、当該秘密軍事情報の秘密指定の水準に 照らし適当な暗号を使用することにより保護される。秘密軍事情報の処理、保管又は送付を行う情報制 度は、当該制度を採用する締約国政府の適当な当局により、秘密保持についての認定を受ける。
第十三条 破壊
1 両締約国政府は、焼却、破砕、パルプ化又は提供された秘密軍事情報の全部若しくは一部の復元を防止する他の方法により、秘密指定された文書及び媒体を破壊する。
2 両締約国政府は、提供された秘密軍事情報の全部又は一部の復元を防止するために、秘密指定された装備を見分けがつかないまでに破壊し、又は当該装備を変更する。
第十四条 複製
両締約国政府は、秘密指定された文書又は媒体を複製するときは、これらに付されている全ての原本の秘密表示についても複製する。両締約国政府は、このような複製された秘密指定された文書又は媒体を、秘密指定された文書又は媒体の原本と同じ管理の下に置く。両締約国政府は、複製物の数を公用の目的のために必要とされる数に限定する
第十五条 翻訳
両締約国政府は、提供された秘密軍事情報の全ての翻訳が、第七条及び次条 の規定に従って秘密軍事情報取扱資格を有する個人により行われることを確保する。両締約国政府は、複製物の数を最小限にとどめるとともに、その配布を管理する。当該翻訳には、適当な秘密指定を付すものとし、かつ、文書又は媒体が提供締約国政府の秘密軍事情報を含むことを示す適当な注釈を翻訳された後の言語により付すものとする。
第十六条 契約企業への秘密軍事情報の提供
受領締約国政府は、提供締約国政府から受領する秘密軍事情報を契約企業(下請契約企業を含む。以下同じ。)に対し提供する前に、自国の施行されている国内法令に従い、次の事項を確保するために適当な措置をとる。
- (a) いかなる個人も、階級、地位又は秘密軍事情報取扱資格のみにより、当該秘密軍事情報へのアクセスを認められないこと。
- (b) 契約企業及び契約企業の施設が、当該秘密軍事情報を保護する能力を有すること。
- (c) 職務上当該秘密軍事情報へのアクセスを必要とする全ての個人が、秘密軍事情報取扱資格を有すること。
- (d) 秘密軍事情報取扱資格が、第七条3に規定する方法と同様の方法により決定されること。
- (e) 当該秘密軍事情報へのアクセスを認められる個人に関して、第七条3に規定する基準が満たされていることを保証するために、適当な手続が実施されること。
- (f) 当該秘密軍事情報へのアクセスを有する全ての個人が、当該秘密軍事情報を保護するための責任について通知されること。
- (g) 受領締約国政府は、当該秘密軍事情報がこの協定において求められているとおりに保護されることを確保するために、当該秘密軍事情報が保管され、又は当該秘密軍事情報へのアクセスが行われている契約企業の各施設において、最初の及び定期的な保安検査を実施すること。
- (h) 当該秘密軍事情報へのアクセスが、職務上当該アクセスを必要とする個人に限定されること。
- (i) 秘密軍事情報取扱資格を有し、かつ、当該秘密軍事情報にアクセスすることを許可されている個人の登録簿が、各施設において保持されること。
- (j) 当該秘密軍事情報の管理及び保護の責任及び権限を有する適格な個人が、指名されること。
- (k) 当該秘密軍事情報が、第十一条 に規定する方法と同様の方法により保管されること。
- (l) 当該秘密軍事情報が、第九条及び第十二条 に規定する方法と同様の方法により送付されること。
- (m) 秘密指定された文書及び媒体並びに秘密指定された装備が、第十三条に規定する方法と同様の方法により破壊されること。
- (n) 秘密指定された文書及び媒体が、第十四条に規定する方法と同様の方法により複製され、及び管理の下に置かれること。
- (o) 当該秘密軍事情報の翻訳が、前条に規定する方法と同様の方法により行われ、かつ、複製物が、当該方法により取り扱われること。
第十七条 紛失及び漏せつ
提供締約国政府は、提供した秘密軍事情報のあらゆる紛失又は漏せつ及び紛失又は漏せつのあらゆる可能性について直ちに通知され、受領締約国政府は、状況を特定するために調査を開始する。受領締約国政府は、提供締約国政府に対し、当該調査の結果及び再発を防止するためにとられる措置に関する情報を送付する。
第十八条 秘密保持に係る代表者による訪問
前記の秘密保持に関する義務の履行は、両締約国政府の秘密保持に係る代表者による相互訪問を通じて促進することができる。このため、一方の締約国政府の秘密保持に係る代表者は、それぞれの秘密保持制度が合理的な程度に同等のものとなることを達成するために、秘密保持の手続について議論し、及びその実施を視察することを目的として、相互に合意する場所において、及び相互に満足する方法により、事前の協議の後に、他方の締約国政府を訪問することが許可される。一方の締約国政府は、他方の締約国政府により提供された秘密軍事情報が適切に保護されているか否かについて、秘密保持に係る代表者が決定するに当たり支援する。
第十九条 費用
各締約国政府は、自国の施行されている国内法令に従い、その予算の範囲内で、この協定の実施に要する各自の費用を負担する。
第二十条 紛争解決
1 この協定の解釈又は適用に関するいかなる紛争も、両締約国政府間の協議によってのみ解決されるものとする。
2 1の規定による紛争の解決の間、両締約国政府は、提供された秘密軍事情報を引き続きこの協定に従って保護する。
第二十一条 効力発生、改正、有効期間及び終了
1この協定は、それぞれの締約国政府がこの協定の効力発生のために必要なそれぞれの国内法上の要件が満たされたことを確認する書面による通告を外交上の経路を通じて行った日のうち、いずれか遅い方の日15に効力を生ずる。
2この協定は、両締約国政府の書面による同意によりいつでも改正することができる。
3この協定は、一年間効力を有し、一方の締約国政府が他方の締約国政府に対しこの協定を終了させる意思を九十日前に外交上の経路を通じて書面により通告しない限り、その効力は、毎年自動的に延長される。
4この協定の終了の後においても、この協定に従って提供された全ての秘密軍事情報は、引き続きこの協定の規定に従って保護される。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
二千十六年十一月二十三日にソウルで、英語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
大韓民国政府のために
References
[1] 外務省 (2016) 日韓秘密軍事情報保護協定の署名 報道発表(平成28年11月23日)
[2] Victor Cha (2019) “The Meaning of GSOMIA Termination: Escalation of the Japan-KoreaDispute.” CSIS Newsletter, August 22, 2019(EN | Google翻訳)
[3] CSIS (2019) The Importance of U.S.-Japan-Korea Trilateral Defense Cooperation, 2019.08.28 (EN | Google翻訳)
[4] 伊藤俊幸 (2019) “1からわかるGSOMIA” NHK政治マガジン 2019年9月4日 (念のためInternet Archiveにも保存しておきました)
[5] 外務省 (2016) 秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定((和文) [PDF 150 KB] | (英文)[PDF 74 KB])