GSOMIA 失効 回避
11月23日 00:00 に失効する流れだった日韓 GSOMIA(以下「GSOMIA」)の失効は、韓国政府が破棄通告の効力停止を発表したことにより、ひとまず回避されました[1]。もっとも今回は単に「〆切を延ばしただけ」のようです。
今回の流れは、本サイトで整理したシナリオ「②日本は管理強化を維持したが、何らかの理由で韓国が破棄撤回(→ 再締結 )」に似ていますが、どうやら破棄を撤回したわけではなく、「効力を停止」という良くわからない状況のようです😕❓。いずれにしてもその背後に米国のプレッシャーがあったことは誰の目にも明らかです。
繰り返し報道されているように、防衛における日米韓の3か国関係(trilateral security partnership)を米国が重視する姿勢は一貫しており、とりわけ、各方面で盛んな議論を引き起こした「アジア再保証イニシアチブ法」(Asia Reassurance Initiative Act = ARIA)[2]を見るとこのことは一層はっきりします。
インド太平洋 戦略
アジア再保証イニシアチブ法(ARIA)
ARIA の3本柱
2018年に成立したアジア再保証イニシアチブ法[2]は、3つの柱 — インド太平洋地域における ①米国の安全保障の利益、②米国の経済的利益、③米国の価値 — から成り立っています。
米国の安全保障の利益に関係する条文
①米国の安全保障の利益の条文構成は Table 1 の通りです。この節(Title II)の中で trilateral security partnership (以下「Trilat」)を定めているのは Sec. 206 です。
Table 1: Title II インド太平洋における米国の安全保障の利益
- Sec. 201. Authorization of appropriations.
- Sec. 202. Treaty alliances in the Indo-Pacific region.
- Sec. 203. United States-China relationship.
- Sec. 204. United States-India strategic partnership.
- Sec. 205. United States-ASEAN strategic partnership.
- Sec. 206. United States-Republic of Korea-Japan trilateral security partnership.
- Sec. 207. Quadrilateral security dialogue.
- Sec. 208. Enhanced security partnerships in Southeast Asia.
- Sec. 209. Commitment to Taiwan.
- Sec. 210. North Korea strategy.
- Sec. 211. New Zealand.
- Sec. 212. The Pacific Islands.
- Sec. 213. Freedom of navigation and overflight; promotion of international law.
- Sec. 214. Combating terrorism in Southeast Asia.
- Sec. 215. Cybersecurity cooperation.
- Sec. 216. Nonproliferation and arms control in the Indo-Pacific region.
Source: アジア再保証イニシアチブ法[2] (太字イタリック化はGGCSによる)
Sec. 206. 米国-韓国-日本 3か国安全保障パートナーシップ
Sec. 206 は、Trilat について次のように規定しています。
Sec. 206 大統領は、ミサイル防衛、情報共有及び防衛関連の構想を含む米韓日3か国安全保障協力を深化させる戦略を立案すべき旨を連邦議会は声明する。
Sec. 206 を含む ARIA の全体構造については、米国議会調査局報告書[3]に予算等も含めて簡潔にまとめらており、また、国会図書館調査及び立法考査局の報告書[4]にも詳しく解説されています。
インド太平洋 戦略報告書
さらに、今年(2019年)06月に公表された「インド太平洋戦略報告書」(米国防省の)[5]は、インド太平洋 の状況を米国がどのように捉えているかが良く理解できます。
これらの資料を読むと、間違っても GSOMIA破棄などと口走ってはマズイことが理解できると思います。😱
自由で開かれた インド太平洋
月が のぼるし 日がしずむ
GSOMIA の話に端を発したため延々と武張った、しかも米国中心の話が続いてしまいましたが、ほんらい海は広くて大きいものなので、このあたりで穏やかな方向に話題をシフトしたいと思います。🏝
[1] 日本経済新聞(電子版) (2019). 日韓GSOMIA失効回避 韓国、破棄通告を停止
[2] 115th U.S. Congress (2018). Asia Reassurance Initiative Act (ARIA) of 2018, (ARIA; P.L. 115-409)
[3] Michael F. Martin, et al. (2019). The Asia Reassurance Initiative Act (ARIA) of 2018, Congressional Research Service Reports.
[4] 国立国会図書館 (2019). アメリカの外交政策と日本 平成30年度国際政策セミナー報告書, 国立国会図書館 調査及び立法考査局 2019年10月
[5] U.S. DOD (2019). Indo-Pacific Strategy Report, (2019-06-01)