本体の「ごたごた気流観測」の方の更新がイマイチですが、「憲法のメモ帳」の項目を育てています。
日本国憲法
困った人への対応法 – 憲法のメモ帳
意見や見解の相違を認めない人、許さない人は世の中に一定割合いますよね。これにどう対応して行くか、困った人への対応法次第でストレスが大いに違ってくるし、多分健康寿命にも関係してきそう。そこで困った人への対応法。
飯沢式対応法
それで思い出したのが、劇作家の飯沢匡(1909-94)のエピソードです。飯沢氏のことは、NHKテレビの「ブーフーウー」(1960-67)や、「とんでけブッチー」(1971-74)、「ミューミューニャーニャー」(1979-83年)などの原作者としてご存知の方も多いかと思います(Cf. Wikipedia)。
私自身は飯沢氏のテレビの仕事しか見たことがないのであまり知ったようなことは言えませんが、舞台劇の方はテレビとは違ってかなり際どいところをついていたため、ややこしいタイプの方の家庭訪問をしばしば受けたそうです。
たとえば、「もう一人のヒト」は、劇団民藝で1970年初演(Table)の風刺喜劇ですが、南朝の話をモチーフとした作品だったため当然かなりの物議を醸したようです。その結果しばしば「家庭訪問」を受け、皇国の伝統だとか歴史、皇統について厳しくレクチャーを受ける機会を得た。普通の神経ならノイローゼになりそうですが、氏はこれにどう対応したか?
実は、1909(明治42)年に生まれた飯沢氏は尋常小学校で学んだ世代なので、思想信条とは関係なく皇統譜はバリバリに暗記、身体に染み込んでいるという隠し属性を持っていた。そこで少しも騒がず、「じんむ、すいぜい、あんねい、いとく、かうせう、かうあん、かうれい、かうげん…」とお経を唱え、「で、君は全部言えるの?言えなきゃ非国民だぞ」と逆ギレしてみせた。されば経文の霊験有り難く事無きを得たとなむ。
この話、たしか飯沢氏の「武器としての笑い」(1977年 岩波書店)に載っていたはずだと思い、本棚をひっくり返して発掘、表紙の写真まで撮って準備したのに、読んでみたら違うことがわかりました。いろんなことが記憶の彼方に過ぎ去る今日この頃…。
皇統譜をウェブで探したところ、資料がWikipediaにあったので、表データを取得するスクリプトをでっち上げてJupyter Notebook形式でGitHubに置いておきました。ちょっと改造すると他のサイトでも使えます(多分。きっと。願わくば。)。
※落ち着いて調べたら、宮内庁に公式の系図がありました。
思うに、何かに凝り固まって他人を攻撃してくる人って、そのことについてあまりちゃんと勉強していないことが多いのではないのかと。もちろん、例外はありますが大概そう。なぜって、マトモに勉強したら自分の主張を絶対的なものだと信じ込んで攻撃的に他人に議論を吹っかけるようなことができるはずがない。
応用編
憲法は最高法規であるため、多かれ少なかれ条文は抽象的になりがちですが[1]、それを良いことに(?)、オレサマ解釈で憲法条文を持ち出して絶対的真理のように掲げて相手をねじ伏せて反論は認めないという例が多いように思えます。
そこで、飯沢メソッドの応用。相手が「憲法●条が違反だ!!」と攻めてきたら、「ちょっと待て、では▲条との関係はどうなの?」とか、判例はどうなの?とか小一時間問い詰めてはどうか?
空気読めてないかも知れないけど
直近で言えば、「検閲」について。もちろん、日常の用語法で「検閲」といった場合は、別に行政権が主体でなくたって良いし、発表後の差し止めだって検閲と呼んで差し支えないと思います。むしろそこで判例なんか持ち出してくる奴の方が空気読めなさ過ぎだとは思います。
しかし、マスコミの場などで「日本国憲法第21条第1項の云々」と条文まで出して来るんなら、もう少し真面目にやってもらいたいなぁと。読み込んでもいない条文を持ち出して自説補強に援用するというのは憲法に対して失礼過ぎ。
戦後期の憲法判例を見ていると、なんでこんなことを争っているのかとちょっと辟易するようなものも散見されます。しかし、そこには政治的立場に関係なく、「新憲法」が何を示しているのか、その可能性を真剣に探ろうとしていた真摯な姿があるように感じられ、頭が下がります。
昔テレビで見た映画で、刑事役の三船敏郎が「ホシ」を詰問する場面で、ホシの女性が、「あら、刑事さん新憲法の第38条をご存じないの?私には黙秘権があるのよ?」というシーンがありました[2]。みんな新憲法に期待してワクワクしていたんだろうな。
[1] というのは実は不正確で、国によっては日本だったら法律や政令で定めるようなことまで憲法に書いてある例が結構あります。
[2] たしかにあったよな?大丈夫かな?と自問。題名をご存知の方いらっしゃった乞うご教示。
Table: 初演の主なスタッフ、キャスト
初演 1970年02月24 – 25日、 福井市文化会館
演 出 | 飯沢 匡 |
演出助手 | 高橋 清祐 |
装 置 | 織田 音也 |
照 明 | 秤屋 和久 |
音 楽 | 小森 昭宏 |
効 果 | 山本 泰敬 |
衣 裳 | 中島かの子 |
美 術 | 内田喜三男 |
〔キャスト〕 | |
香椎宮為永王 | 滝沢 修 |
茂徳王 | 三浦 威 |
彰子女王 | 樫山 文枝 |
小沢幾之進 | 中村翫右衛門(前進座) |
副官 | 山内 明 |
福竜こと広橋デン | 細川ちか子 |
杉本純一郎 | 宇野 重吉 |
サク | 小夜 福子 |
勝 | 米倉斉加年 |
笹原すみ | 水原 英子 |
鈴川利和 | 佐野 浅夫 |
ミサ | 斎藤 美和 |
倉田巡査 | 内藤 武敏 |
金田 | 下条 正巳 |
工員A | 小杉 勇二 |
B | 岡倉 俊彦 |
区役所吏員 | 杉本 孝次 |
佐藤 | 嵯峨 善兵 |
町会役員1 | 内倉 正男 |
2 | 福山 錬 |
婦人会会員1 | 本田悠美子 |
2 | 瀬戸口 夏 |
藤沢 | 村岡 章 |
東条 | 長浜 藤夫 |
町民1 | 岡橋 和彦 |
2 | 矢野 英太 |
長門侯爵 | 水谷 貞雄 |
憲兵 | 今野 鶏三 |
娘1 | 木村 菜穂 |
2 | 角谷恵美子(前進座) |
Source: 飯沢匡.飯沢匡喜劇集 VI.未来社,1970,295p.,pp.273-279