受信契約強制に合憲判断
NHK受信契約締結の強制を定めた放送法64条1項[1]の合憲性を争った裁判は、最高裁の合憲判断(大法廷判決H29.12.06)が出て決着しました(ただし、木内道祥裁判官の反対意見が付されています)。
しかしその後、「NHK受信契約締結の義務はあるが受信料の支払い義務はない」という少数有力説(?)が出てきたため、立憲民主党の中谷一馬衆議院議員がこれを質す質問主意書を2019年08月01日に提出[2]、これを受けて政府は同15日付の答弁書[3]で、「当該受信契約を締結した者は、協会に対し、当該受信契約に基づく受信料を支払う義務がある」と回答しました。
特別な負担金?
この問題に関連して、水曜日(09月11日)に発足した第4次安倍再改造内閣で総務相に就任した高市大臣は就任記者会連において、「あくまでもNHKにお願いをしたいのは、受信料というのは受益の対価ではない。受信設備を設置した方々が広く負担をする、NHKの業務をしっかりと維持していくための『特別な負担金』として、皆様に負担していただいている。」と述べました[4]。
これはNHK上田会長の09月05日の発言「受信料はNHKの事業を維持・運営するための特殊な負担金で放送の対価として頂いているわけではない」[5]とは「特殊」か「特別」かの違いだけで平仄は合っていますが、これを聞いて「あれれ?」と感じた方は少なくないのではないでしょうか。
税金のようで税金でない?
連想ゲームになりますが、「放送の対価として頂いているわけではない」と来れば、少なからぬ人が嫌でも暗記している例のフレーズ「特別の給付に対する反対給付としてでなく云々」を嫌でも思い出します。
このフレーズは、「サラリーマン税金訴訟」の最高裁大法廷判決(S60.03.27)に出てくる有名なフレーズで、正確には「租税は、①国家が、②その課税権に基づき、③特別の給付に対する反対給付としてでなく、その経費に充てるための資金を調達する目的をもつて、④一定の要件に該当するすべての者に課する金銭給付」なので、NHKは①国家ではなくもちろん②課税権なんか持っていませんから、受信料が租税に該るわけはありません。
と、ここで一旦納得しかけますが、ではなぜ対価ではないお金を国でもなく徴税権も持たない特殊法人に払わなければならないのか、議論の振り出しに戻ってしまいました。
[1] 放送法64①「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。(後略)」
[2] 令和元年八月一日提出 質問第一六号「令和時代のNHKのあり方に関する質問主意書」
[3] 内閣衆質一九九第一六号 令和元年八月十五日「衆議院議員中谷一馬君提出令和時代のNHKのあり方に関する質問に対する答弁書」
[4] 高市総務大臣就任記者会見の概要(令和元年9月12日)
[5] エキサイトニュース(2019.09.06)